ベトナム戦争をめぐるモノローグ

下の記事の続き。NHKのドキュメンタリーシリーズの第3夜は、第2夜の続きでアメリカのフィルムだった。
1975年4月のサイゴンからの全面撤退を扱ったもので、アメリカ大使や海兵隊員などが可能な限り多くの南ベトナム政府や軍関係者を自分たちといっしょに脱出させようとした様子を描いたものである。4月30日にサイゴンに侵攻した北・解放戦線軍の映像がちょっとだけ出て来たが、前夜に続き、そちら側へのインタビューなどはまったくない。

時の映像と関係者に対する最近のインタビューを通じて描かれるのは、可能な限り多くのベトナム人を脱出させようという努力と、大使館内などに一部を置き去りにせざるをえなかった悔恨にほぼ尽きる。最後の方で「われわれは善意でベトナムに行き...ベトナムの人々を裏切ることになった」という関係者のセリフが流れたが、そこにあるのはやっぱり、アメリカ人の善意とその挫折という自分語りだけである。脱出した側のベトナム人のインタビュイー(これも最近のインタビュー)も2~3人出て来たが、逃げられるか逃げられないかというその場の切羽詰まった状況を語るだけで、当時の南ベトナム政府関係者の主体性が語られているわけでもない。

あくまでモノローグ。これでいいのだろうか。

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ダイアローグとモノローグ

NHKのBS1で深夜に放映しているベトナム戦争終結に関するドキュメントの、最初の2話を見た。
1話目はフランスで制作された番組で、パリでキッシンジャーとレー・ドゥク・トが行った秘密交渉がテーマだった。2話目は75年春、北・解放軍の急速な侵攻の前に、再派兵もできないアメリカが、南ベトナム政府・軍関係者の国外脱出をともなうアメリカ人全面撤退に追い込まれてゆく様子を描いた、アメリカ製のドキュメントだった。

フランスのインドシナものの映画や番組と、アメリカのベトナム戦争ものを比較していつも思うのは、フランスのそれにはとりあえず「理解すべき相手」がいるが、アメリカのそれは闘いに成功したり失敗する自分しか描かれないということ、つまりアメリカの作品はいつもモノローグなのである。敵は「なんだかわからない邪悪な敵(共産主義者)」の「熱帯のゲリラ」でしかない。タイだろうがインドネシアだろうが区別はあんまりない。アメリカ政府を批判するにせよ、ほとんどの場合それは、そういうわけのわからない敵に対する闘いが正義(アメリカの正義)に反していたという反省であって、相手の個性は問題にならない。フランスの話に戻って、パリ協定妥結まで紹介した番組の最後に挿入されていた、ベトナム北部の水上人形劇のシーンは、フランス人らしい象徴的な意味を込めたものだろう。

今回の場合、パリ交渉とサイゴン陥落というテーマの違いはあるにせよ、フランスの番組が北ベトナム・南解放戦線側の関係者の証言(かのグエン・ティ・ビンも含まれる)をまめに紹介しているのに対し、アメリカの番組はアメリカ政府・大使館や軍、それに南ベトナム政府関係者の取材オンリーで、北・解放戦線側の人間はいっさい出てこない。
もしかすると今夜の番組でそちら側からの視点が示されるのかもしれないが、どうなのだろう。

大野徹先生に叙勲

大阪外大のビルマ語・ビルマ史の教員だった大野徹先生が、春の叙勲に列せられたそうだ。
鹿児島大学の荻原弘明先生などとならんで、前近代ビルマ史研究のパイオニアとして活躍なさった。
外大教員らしく、ビルマのことについて質問されると、なんでもたちどころに簡明な答えをしておられるのが印象に残っている。東南アジアやアフリカについて詳しく知る気のない日本社会では、「外大で小国の研究・教育一筋」みたいな学者が注目されることはきわめて少ないが、戦後日本が辛うじて世界各地でかなりの評価を受け続けてこられた背後には、工業と経済力、マンガとアニメだけではなく、こういう人々の努力もあったのだということを、最低でもう一桁、できれば二桁多くの人々が理解してくれるといいのだが。

AAWH予行演習第2回

明日はAAWH予行演習第2回。
2つのセッションに分かれて高校の先生(歴史教育のパネル)と院生・ポスドク(帝国や地域社会関する研究発表)がそれぞれ発表することになったが、院生・ポスドク諸君はちゃんと準備をしてるだろうか。
3月の1回目は時期が早いのと高校の先生の発表ばかりだったので「日本語でもいい」ということにしたが、今度もああいうのでいいなどと院生やポスドクに思われたら、とても困るが。

と自分のことを棚に上げて書いたが、いつものP先生に頼んでいた2本目の論文(日朝越比較パネルの論文。英語ではまだほとんど書いていなかった14世紀の碑文から見た村落社会と家族の変動について書いた)の校閲がもどってきたのを見ると、どのページも「変更履歴」が山ほど表示される。汗。。。

名古屋ベトナムネットの活動

相変わらず活発でうらやましい。

◆◆2度目にハノイに行く人向け 細井先生の講演会です。
 4月29日(水・祝) pm2:00~3:30 会場13:45
 金山 名古屋都市センター14階 第4会議室
 月会費1,000円

◆◆VipPartyNagoyaが、音楽ダンスパーティ
 ベトナム語では”GW文化音楽交流”となるらしいです。
 5月5日11:00~18:30 岡崎シビックセンター

◆◆刈谷市でベトナム語入門講座開催
 国際交流協会主催で、講師はベトナム人だそうです。
 申込みは5月10日まで
 http://www.kifanet.com/event/H27.html

--
名古屋ベトナムネット 担当:YURI
電話:070-5589-5608
www.758Vietnam.net

文学部共通概説

毎年一学期にやっている文学部新入生用の授業を、今週の月曜日に担当した。
以前は週に5コマ立てて助教授以上の全教員を出演させていたが、現在は3コマで准教授以上の半分程度が出演する。
学生はどのコマのでもよいから好きな講義を聞いて、2人分についてレポートを提出することになっている(必修科目なので、これの単位がないと卒業できない)。目的は専修決定の手助けという部分がある。

最近はアジアに関心のない学生が多い(嫌いな学生は多くても、知る気はない)ので、4月とはいえ出席する学生は少ないだろうと思って教室に行ったら、170人ほどの新入生のうち122人も来ており、レポート課題などを書いたプリントが足りなくなってしまった。レポート課題も含め、例年のプリントに変えてパワポのスライド中心の講義にしており、プリントはなくてもパワポを見れば対応できるので問題はなかったが、ちょっと驚いた。

この驚きに加え、最初にプロジェクターが嫌がってパワポが映るまでに少し時間がかかったことなどから、講義も調子がよくなかったのだが、それなりには面白がったりショックを受けてくれたようだ。

中身は(1)ベトナム史研究などの自己紹介、(2)阪大史学の挑戦と東洋史の位置、(3)阪大生に求められる選択(19世紀以来の「メジャー」で「無難な」分野を選ぶかそれとも21世紀に必要な新しい分野に挑戦するか)、という毎年の内容を微調整して話したものだが、今年の出席カードにはただ感想を書かせる(入試で選択した地歴の科目も毎年書かせている)だけでなく、ベトナム史陳朝の上皇夫妻・皇帝夫妻による共治体制(わかりやすくツートップ体制と説明した)という私の説を紹介したついでに、通常の王様一人の統治体制とこういうツートップ体制にはそれぞれどんな長所と短所があるか、書ける人は考えを書け、とやったところ、大勢がそれなりの論述をしていた。日常の権力そのものの機能と、非常時や権力継承時の対応という両面を書いている学生が多かったのは、なかなか優秀である。やはり入試に合格した学生は、阪大で歴史といえば論述が必要、というのはかなり理解しているのだろう。

毎度のプロ野球を使った自己紹介・たとえ話に対して、今年も「ジャイアンツは成績を残し続けてきたのだから重視されて当然だ」という「歴史観」をぶつけて反論してきた学生がいた。教員のいうことを鵜呑みにしたり迎合したりしないのは、大事なことである。ただし、ジャイアンツの成績が「平等な条件」のなかでの「フェアーな競争」を通じて実現されたものだったかどうかという問題に気づいてくれるといいのだが。
プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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