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明日は関大付属

明日は関西大学付属の公開授業。今日と連チャンで行く人がどのぐらいいるかな?こちらも楽しみだ。

ところで、今日の討論でも話題になったが、生徒の討論にどのぐらい介入するかというのは難しい。今日も日本と西ドイツの経済成長の要因として「戦争で破壊されなかった場所」とかいう誤解を含んだ発表(ホワイトボードに書いたものを前の黒板に貼り付ける形式)もあったのだが、時間切れということもあってそのまま訂正されずに終わってしまった。「小テスト」なら細かく訂正して返すのだが、討論-発表の場合、いちいち全部正解を説明してしまうのも良くないのだろう(時間があればさらに調べさせたり討論させるべきだろう)。そのへんのさじ加減は、大学の授業でもしばしば悩むところである。

神戸大付属の「地理基礎」「歴史基礎」公開研究会

今日は神戸大付属の「地理基礎」「歴史基礎」の公開研究会。話題になっているだけあって最初の予定の教室を大きなホールに変えたがそれでも満杯。見学者が100人ぐらい来ていた。油井先生や東京外大の先生方、東大の杉山清彦さんなど、知っている人もおおぜいいた。

授業は、「地理基礎」「歴史基礎」の順で行われた。地理基礎は、「風の谷のナウシカ」の「風の谷」はどこと考えられるか、作品中の自然環境や人間の描写から推測しようというもので、とても面白かった。もちろん「正解」はないのだが、ブドウが生える西岸海洋性気候ないしそれに類する気候、ヨーロッパ風の城や人の姿などで、多くの班が南欧からアナトリア、中東あたりに矢印をつけており、宮崎駿の書いた物では黒海に近いところだということだが、ストーリーは旧ユーゴの解体も踏まえているそうだ。

ちなみに討論ネタとしては、これをアメリカ大陸にもっていく議論もムリヤリにできないか、というのを一度大学でやってみたい気がする。理由の第一は「風の谷。。。」というタイトルの、アメリカ映画の名作「わが谷は緑なりき」との関係ありやなしやという点(だれか、無関係ということをご存じの方がおられたらお知らせ下さい)。「わが谷は。。。」も産業文明の問題が背景にあったはずだ。第二は、ヨーロッパ風の城などを除けば自然条件はカリフォルニアなどでも同じだということ(これまた産業文明の行きづまりを描くのに悪い場所ではないだろう)。第三は突飛だが、「風の谷」に描かれた砂漠からの連想。産業文明ではないが、カリフォルニアを含むアメリカ大陸の中部・西部は、中世温暖化による干ばつで農業社会が大きな被害を受け、それが先住民社会の衰退につながったとされる地域である(と教わった)。

もう1つ思いついた討論ネタは歴史的なもの。「ファン投票」では「風の谷」の候補地として、イスケンデルンという場所が第一位だとか。イスケンデルンとはどういう地名か、そういう古代都市が立地しえたような場所に、なぜ産業文明崩壊後の「風の谷」がそこに生き残りうるのかという問題である。産業と生態を考える宮崎駿なら考えそうな気もするのだが、皆さんならどう答えますか?

つぎに「歴史基礎」の授業は、通常日本国内だけのストーリーとして語られている高度成長を冷戦期の世界の中に位置づけさせようというテーマだったが、若い先生がやったので、見学している「高度成長を同時代として生きた」先生たち(私も)からみると、取り上げるエピソードやモノなどについてツッコミどころの多い内容だったのは、担当の先生の不運だったか。

冷戦構造のなかでの西ドイツの経済成長との比較が柱で、アメリカの支援のような共通性と労働力構造の違い(日本の集団就職、西ドイツの東欧難民+南欧・中東移民)などに着目させようとしたのはよいが、現代につながる問題としては、為替レートの効果は必須だろう。それと「三種の神器」などは定番として取り上げられていたが、「日本人が海外へ行けるようになった時代(観光と企業進出の両方)」ということもぜひとも取り上げて欲しかった。今日につながっていることである。私がこの問題の入り口によく使うネタは、戦前日本の最大の貿易相手(投資先でもあった)だった中国が高度成長の相手としてはほとんど無に等しい存在になっていた点を考えさせること(巨大輸出先だったインドとの貿易も細っている)。そのかわりにどこに日本企業は進出したか? 海外旅行(これも戦前は朝鮮・台湾を別とすれば満洲を含む中国が多かった)はどこに行ったか? ちなみに、日本の高度経済成長に関する生徒の事前アンケートが参観者向け資料で紹介されていたが、高度成長の原因も成長による社会変化も、海外旅行とか企業進出にふれたものは皆無だった。これは中学教育に対しても疑問を呈さねばならない。いろいろ盛りだくさんにしすぎないために削って良い問題ではない。

最後に授業をめぐる討議。
土曜日の東大シンポで『市民のための世界史』最終章の歴史研究の方法のところに言及してもらってうれしかったのだが、それと近い問題を、「歴史的思考力の育成」や、地理基礎(空間認識の育成)との対比で出てくるべき「時間認識の育成」に関連して、授業後の討議で発言させてもらった。そのまえに「近現代中心にするなら、そこは歴史学の専売特許でなく政治学・経済学国際・関係論なども研究するので、それらとの違いを出さねばならない」という高橋昌明先生の発言があったのとも関係するのだが、やはり「時間や時代とはなにか」という問題を歴史基礎の内容に組み込むべきだということである。たとえば歴史の教科書は時代を区切って論述する。それはなぜなのか、またどういう視角や基準によって時代は区切られているか、高校生もよく知っている時代を例にして討論させることはそんなに難しくないはずだ。もうひとつ、先日ブログで紹介した新聞記事の「今の教科書は鎌倉幕府の成立を「いいくにつくる(1192年)」とは書いていないという例がある。代わりに1185年、1180年、1183年などいくつかの例があるわけだが、それの論拠を高校生向けに説明して、それぞれの視角や基準の違いを討論させることは、これもそんなに難しいとは思われない。そこから出てくるのは、歴史の説明(解釈)に見られる論理のパターンである。同じ事象をみても学問が違えば別の論理(約束事)によって説明する。これはそこに導く材料になるだろう。実は拙著『わかる歴史・面白い歴史・役に立つ歴史』に書いたのだが、歴史叙述における5W1Hの説明の論理は、たとえば「報道」や「裁判における事実認定」の論理と同じではない。そのサワリを歴史基礎で取り上げておくことは、「歴史的思考力」の前提として重要だろう。

以下はいつもの悪口。歴史的思考力というと皆さんたいてい、どういう史料をどういうふうに読ませるかという話に集中する。今日もそうだった。それ自体は必要なことに違いないが、しかし遅塚忠躬先生の遺著となった『史学概論』に何が書いてあったか思いだしてほしい。歴史研究は事実立脚性と論理整合性を要すると書いてあったはずだ。「史料」の話と「概念の獲得」ぐらいで議論をおわらせ、どういう論理性を身につけさせるかを論じないのは絶対におかしい。

教養歴史教育に関する東大シンポ

東大シンポは東北大や宮城県の先生など、いろんな人に会えてよかった。韓国の鄭在貞先生は東北アジア財団におられた2009年にお会いした方だった、台湾の大学の一般教育(通識教育)の問題も興味深かった。日本史の桜井英治さんが論点を明確化するためにわざと「専門研究の成果を話したい教員」の立場でコメントしてくれたのも有益だった。卒業生で外務省勤務のNさんも飲み会に来てくれて元気な近況を聞くことが出来た。

台湾でも韓国でも、教養教育の仕組みはどんどん変わっているが、韓国でも教養課程の歴史系科目の内容はバラバラ、長老教授以外はやりたがらないなど、日本と共通の問題点があるようだ。ただし人文系の危機の中で、韓国史検定を大規模に実施し、その成績を財閥系大企業の入社試験に取り入れさせるなどの取り組みもおこなわれたとか。高校「東アジア史」に関する質問も出たが、教科書が17万部売れたとかで、それは「世界史」の履修者数よりだいぶん多いらしい。

飲み会で日本中世史の桜井英治さんが言われていた論点。一次史料だけ読んでいればいいということにならない場合の、良い二次史料を選んで正確に読み取る訓練。グローバルヒストリーもこれなしには成り立たない。その訓練を歴史学全般で意識的にやるべきだろう。

もう一つの論点。歴史は対象の性格上、アマチュアでも「解釈」することができる。理系のある種の学問のように、一定の訓練をした人でないと触れることすらできない世界というのではない。つまり「素人談義」の存在を排除できない。それは趣味でする場合だけではない。「勝手な解釈」をするのは、政治化や財界人から意味も分からず暗記をさせられている高校生まで同じことである。それを「放っておけ」と無視するか、「見ておれない」と声をかけるか、そこが問題なのだ。

静岡から見えた黒川さんの発言。教育学部を出て小中学校の先生になる学生たちは、教員免許の単位要件の問題もあって、歴史そのものの知識は非常に少ない。これは高校教員がもともとの専門以外の科目を教える(たとえば世界史の教員が日本史や地理を教える)場合も同じであろう。そういう学生のためにコンパクトで正確な知識(や必要な場合の調べ方)を教えておかないと、大変なことがおこりかねない。シンポではそこまで言えなかったが、まず学ばせるべきは(小さな大学でも設置すべきは)、阪大で勧めている「市民のための世界史と歴史学方法論講義、歴史教育研究会の3点セット」のような共通基礎科目であって、特殊講義はそれに上積みするかたちで聞かせる(開講する)べきものだ、という考えを徹底させたい。教員の専門性を先に考えて科目設定をしたり、学生の興味にまかせたランダムな履修をさせるのは正しくない。

これを含め、教員養成の問題点について、今回の主催者は(テーマそのものは「歴史的教養」なので)あまり意識しておられなかったようだが、阪大の「市民のための世界史」が一般学生への教養教育を表に出しながら、教員志望の学生を第二のターゲットにしているように、両者は密接な関係がある。その認識が共有されたとすれば、ひとつの成果だろう。

『市民のための世界史』を通じて、大学レベルの教科書・教材作りの必要にふれた発言者が多かったのも収穫だろう。この関連で、比較ジェンダー史研究会の出版+HPのことも紹介しておいた。

シンポで出た質問のひとつは、「自分の独自の研究成果を話す欲求の強い大学教員を、こうした概論の方に向ける方法はなにか」というもの。また飲み会では、「どうしてそこまでやれるのか、本業を犠牲にしているという意識はないか」という質問も受けた。私だってもちろんベトナム中世の話をしたいのだが、同時に研究者・知識人は「世界を語る」欲望をもつはずである、そこに訴えることが有効だろうと、シンポでは答えた。くわえて阪大のケースから考えると、系統的な教員採用人事(「世界を語る」のに近いところにいる世界システム論やシルクロード史など)と、個々バラバラな授業にさせない司令塔の存在が大事だと言っておいた。飲み会では、「ある先生がいなくなったらオシマイ、とならないような組織と後継者育成が必要だ」という話もした。

そして強調したのが、一過性の取り組みならやらない方がましで、一定期間継続して取り組んではじめて効果が出る、しかも「一生それしかやらない」というとではなくても、「個別研究の片手間」ではない人間がいなければならない、ということである。その場では言わなかったが、プロ野球の経営を見ればそのことが明らかである。親会社が自社の宣伝のためとしか考えていなくて、球団社長などは本社から特に適正・専門性を考えずに送り込む。送り込まれた人物は野球と野球界に特に詳しいわけでもなく、数年の任期が終われば本社に戻っていく。こういうことを平気でやっている親会社のもとで、球団経営がうまくいくことは稀だろう。大学における教養教育や高大連携の問題もまったく同じである。せっかく阪大から行ったS山君もいることだから、駒場ではぜひこの取り組みを続けてほしい。東大が変わればインパクトは大きい。

コロキアム「アジアの環境ガバナンスと市民の役割」

こういう案内も来た。

平成26年度 大東文化大学コロキウム(第2回)
アジアの環境ガバナンスと市民の役割

国家統制経済から市場経済に移行したアジアの国々では、開発が自然環境や
住民の健康・生活に負の影響を及ぼしている事例がある。この問題解決の
ためには、多様な利害関係者が開発政策の決定と問題解決の過程に参加できる
環境ガバナンスが必要と思われる。しかし、それぞれの国や地域、民族に
よって適切なガバナンスの形は異なるであろう。
このような問題意識の下、大東文化大学では平成23年度から25年度まで、
文部科学省科学研究費補助金により、ベトナムを対象として鉱物資源開発と
ガバナンスのあり方について研究を進め、さらに26年度からは同補助金により、
アジアの市場経済移行国に対象を拡大した研究を継続している。
平成26年度第2回コロキウムでは、アジア諸国の環境ガバナンスにおける市民の
役割について、ベトナム、ミャンマー、フィリピンその他の具体的事例を
報告し、これらに対して日本として何ができるかを考察する。

●日時:2015年3月13日(金) 13:00~17:30
●場所:バリュー貸会議室神田WEST
    東京都千代田区内神田2-6-2 矢板ビル4F 5号室
東京メトロ丸ノ内線「大手町」駅 A2出口 徒歩4分
JR山手線「神田」駅 西口 徒歩4分
http://www.kaigishitsu-va.jp/chiyoda/c_kanda_west.html
●会費無料
●事前申し込み不要

●プログラム
13:00~13:10 趣旨説明:中野亜里(大東文化大学)
13:10~14:10 報告1
古宇田亮一(産業技術総合研究所)
「地表調査と宇宙監視から見た小規模採掘:ガバナンスとの関連で:
ベトナムとアフ
リカの事例」(Artisanal small scale mining monitored by surface econnaissance and from space in relation to the governance:
examples of Vietnam and African countries.)
14:10~15:10 報告2
SEKINE Yukari(Graduate School of Global Studies, Sophia University)
“Globalization and local land governance: confiscation and political contention in transitioning Myanmar’s Dawei Special Economic Zone"
15:10~15:30 休憩
15:30~16:30 報告3
村尾 智(産業技術総合研究所)
「アジアのスモールスケールマイニングに対して非政府系組織が果たす役割」
(Contribution of NGOs towards solutions of the artisanal/small-scale mining issues)
16:30~17:30 報告4
島林孝樹(早稲田大学大学院)
「ポスト冷戦期における日本の対インドシナ・メコン地域政策 ―インドシナ
総合開発フォーラムを中心に―」(Japan's Regional Policy toward Indochina/Mekong in the Post-Cold War Period:An Analysis of FCDI)
17:30~18:00 総合討論
18:00 閉会
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京都高社研・部総会の案内

ここはいつもハイレベルだ。AAWHの予行演習会と重なっていなければ、私も行きたいのだが。

2014年度 部会総会のご案内
>
>  梅花の候、皆様方には日々ご清祥のこととお慶び申し上げます。日頃は当研究会の活動にご理解とご協力をいただき誠にありがとうございます。
>  昨年は第一次世界大戦勃発から100周年でした。今年は第二次世界大戦およびアジア太平洋戦争の終結後70年の節目となります。二つの大戦をどのように理解し、どう記憶するかがあらためて問われています。また今年は日韓基本条約締結50周年でもあります。日韓・日中の関係が依然として緊張し、対話の糸口が見いだせないなか、日本の近代の歩みを再度検証することも求められています。
>  今回、私たちの研究会では、日本近代史の専門家である今西一氏(大阪大学招聘教授、小樽商科大学名誉教授)に講演をお願いすることになりました。氏は東アジアの研究者との交流にも積極的にとりくまれています。講演では近年のご活動をふまえ、近代史研究の現状と課題をお話しいただく予定です。また授業実践として第一次世界大戦の授業に取り組んだ大川先生、歴史教育にアクティブラーニングの手法を取り入れた川島先生、グアム研修旅行の際の事前学習にとりくんだ本山先生、また森口先生には中国との歴史教育交流の経験について報告していただきま
> す。これらのご報告を手がかりに、歴史認識や教育のありかたを考える場としたいと思います。
> 下記の要領で部会総会を開催しますのでご案内を申し上げます。関心をお持ちの先生方はどうぞふるってご参加下さい。
> <記>
>
> テーマ: 戦後70年を迎えるにあたって~歴史教育の可能性~
>
> (1)日時:3月21日(土・祝) 10:00~17:00
> (2)会場:会場:職員会館「かもがわ」
>    〒604-0901 京都市中京区土手町夷川上ル末丸町284 TEL 075-256-1307
>    (河原町二条 東北向、銅駝美術工芸高校の北側、ホテル石長の東側)
> (3)内容
>   ①講演
>    今西一 先生(大阪大学招聘教授、小樽商科大学名誉教授)
>     「戦後歴史学・再論」
>   ②授業実践報告
> 大川沙織 先生(南陽高校)
> 「高校生と学ぶ第一次世界大戦」
> 森口等 先生(立命館宇治高校)
> 「日中戦争をどう教えるのか?~日中歴史教育交流に参加して~」
> 川島啓一 先生(同志社高校)
> 「アクティブラーニング型学習を世界史授業に導入した2年間を振り返って
>  ~生徒の反応と今後の課題~」
>    本山雅章 先生(日吉ヶ丘高校)
>     「グアム研修旅行の事前学習の取り組みについて」
>
>   ③合同部会:センター試験分析
> 世界史:毛戸祐司 先生(田辺高校)
> 日本史:藤田雅之 先生(鳥羽高校)
> 地理 :徳安浩明 先生(洛星高校)
> 公民 :高田敏尚 先生(京都教育大附属高校)
>
> (4)日程
> 3月21日(土・祝)
>      9:45 受付
>     10:00 開会・会長あいさつ
>     10:15 ②授業実践報告
>    12:00  (昼食休憩)
> 13:30 ①講演:今西一 先生(大阪大学)
>     15:45 ③合同部会:センター試験分析
>     17:00 終了
>
> <参加のお申し込み>
> ・準備の都合上、同封のFAX用紙か電話で3月19日(木)までにご返事下さい。
>   連絡先:京都高校社会科研究会事務局 川島啓一 宛
>    〒606-8558 京都市左京区岩倉大鷺町89
>           同志社高校気付
>       TEL:075-781-7121
>      FAX:075-781-7124
> <連絡>
> 2014年度の授業プリント・資料教材・研究発表レジュメなどありましたら交流のためにご持参下さい。レポート参加も大歓迎です。
>
>  【講師紹介】
>  今西一(いまにし・はじめ)先生は、大阪大学招聘教授、小樽商科大学名誉教授。専門は日本近代史。文学修士(立命館大学)、農学博士(京都大学)。『近代日本成立期の民衆運動』(1991年)、『近代日本の差別と村落』(1993年)、『国民国家とマイノリティ』(2000年)、『メディア都市・京都の誕生』(1999年)、『遊女の社会史』(2007年)、『近代日本の地域社会』(2009年)など著書、論文多数。近年は「帝国日本の移動と動員」をテーマに、国内外の研究者との共同研究にとりくんでいる。

毎日新聞の「字件ですよ」

校閲の裏話などを書いた記事で、笑えるものが多い。過去の記事をまとめた単行本も出ているようだ。http://www.amazon.co.jp/%E5%AD%97%E4%BB%B6%E3%81%A7%E3%81%99%E3%82%88-%E2%80%95%E6%A0%A1%E9%96%B2%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%81%E3%82%AF%E8%A9%B1-%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9-%E6%AF%8E%E6%97%A5%E6%96%B0%E8%81%9E%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%B0%E3%82%93%E3%81%8F/dp/4620720747

「学んだ歴史も今は昔」と題する今朝の記事は、若者言葉も記者の引き出しに入れておかねばならないという話を枕にして、現在の学界や教科書などの表現が大人が暗記したものと違っていることを記者が知らないとまずい例がいくつか挙げてある。

中大兄皇子が蘇我蝦夷・入鹿を倒した政変は「乙巳の変」。「大化の改新」はそのあとの一連の改革を言うのであって、「大化の改新」イコール645年だけの事件を思わせないためにも、政変は区別して呼ぶ方がよい。

鎌倉幕府の成立年についても「いいくにつくる鎌倉幕府」ではなくなっていることを、1185年以外の80年、83年、89年などの説にもふれながら説明している。堺市にある最大の前方後円墳は大仙陵古墳ないし大山古墳。紙面では仁徳天皇陵と覚えた読者に配慮して「大仙陵古墳(仁徳天皇陵)」と書く傾向になっているそうだ。

毎度問題にしてきたように、歴史の教科書やそこでの表記・呼称が変わるという認識や発想をもっていない大人はきわめて多い。東大のシンポでもそれに一言ふれるつもりである。その意味で、今日の記事はとても有り難い。

ただし初めの枕の部分に笑えない話が書いてあった。学生言葉で深夜までや徹夜の研究を強いるゼミを「ブラックゼミ」、拘束時間も長くなく和気あいあいとした雰囲気で過ごせるのが「ホワイトゼミ」というのだそうだ。大学全体がブラック企業化している点はきびしく批判されねばならないが、一方で「半分体育会」の私としては、特に事情のない学生には大量のの勉強を要求するのが当然だという考えを捨てることはできない。
プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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