公開シンポジウム「日本占領下の南洋」

≪公開シンポジウム≫ 日本占領下の南洋

日時: 2014年 11月 16日(日) 13 : 30~17 : 00
場所: 立教大学池袋キャンパス 太刀川記念館3階多目的ホール

<申込・参加費 不要> ※同時通訳あり


13:30 ~ *開会挨拶*上田 信(本学文学部教授 アジア地域研究所 所長)
13:35 ~ *報告*  「日本占領下のマラヤ」 
 KRATOSKA, Paul(クラトスカ、ポール)氏 ( 国立シンガポール大学教授、本学招
聘研究員)

14:15 ~ *報告*  「日本のインドネシア占領を考える」
 後藤 乾一氏(早稲田大学名誉教授) 

14:55休憩(10 分)

15:05 ~ *報告*  「日本占領下の東南アジアにおける日本語教育―マラヤ、北ボ
ルネオを中心に―」
 松永 典子氏 ( 九州大学教授)

15:45 ~ *報告*  「日本占領下インドネシアで語られた「大東亜共栄圏文化」
の理念
― 日刊紙「アシア・ラヤ」上の日本徴用文化人と現地作家の論説を中心に―」
姫本 由美子(アジア地域研究所特任研究員)

16:30 ~  *パネルディスカッション*
 進行:豊田 三佳(本学観光学部准教授 アジア地域研究所 所員) 

16:55 ~ *閉会挨拶*弘末 雅士(本学文学部教授 アジア地域研究所 所員)
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「試しにこう考えて見よう」という手続きを許さない人々

與那覇潤さんの『中国化する日本』を褒めた私の記事がブログでボロクソに書かれているのを偶然発見。
http://watashinim.exblog.jp/m2013-04-01/
本論は與那覇批判なので私は出る幕ではないのだが、與那覇本が日本の植民地主義や侵略(特に朝鮮半島に対する)を免罪する立場に立っているという批判を詳しく書いてる人がいて、與那覇さんがそれに対して沈黙しているのは反論できないからだ、したがってそういう本を褒め桃木(その他数人の名前もあがっている)もバカだ、という理屈だと理解した。

個々の論点について、元の書評での與那覇批判を私が論評する能力はないが、基本的にズレているのは、大日本帝国についてこの批判者のような「正当派」の言い方でダメな相手をどうするかという発想で書かれている與那覇本に対して、正当派の意見を書かないからそれは日本の植民地支配や侵略を免罪するものだという批判をしている点だろう。変化球を投げたのに、直球の投げ方だけを基準にして、「けしからん、お前のボールの握りや投げ方にはこれこれの欠点がある」と批判しているようなものなのである。私がいつも言っていることだが、こういう批判をする人は、「ためしに通常と違うこれこれの見方をしてみよう」「わざとこういう角度から見たらものはどう見えるか」という考え方を許さない。歴史についてそんなことをしようとすると、支配者や侵略者を免罪するとして罵倒される。人民の主体性を否定するとして非難される。しかしそういう非難の下からは、きわめて画一的な「正しい見方」しか出てこなくなる。そうすると、その正しいこと自体が「本当に理解してはいないタダの暗記」になり、「反動派」の変化球攻撃や反則攻撃に対応できなくなる。このジレンマへの悩みが、批判子にあるかどうかは、上の記事とそこに引かれている元書評からは読み取れなかった。

ちなみに與那覇本の「中国化」「江戸時代化」などの「定義が示されていない」という批判のあたりが、「ためしにする議論」を受け付けない人々の論理的特徴をよく表しているだろう。ある種の歴史主義に立脚して、「超歴史的」と見える枠組み設定を最初から受け付けないというのは、「歴史を論ずるという営み」の幅を自ら狭めることだと、私などは考える。

六波羅幕府



高橋昌明さんの『平家と六波羅幕府』への美川圭さんの書評が参考になった。

原著が指摘する、戦前に軍国主義と結びついて普及し戦後歴史学が受け継いでしまった「質実剛健で進歩的な武士」vs「軽佻浮薄で反動的な貴族」という歴史像の問題点は、関西の日本史学界では常識だろうが、歴史教育の場ではいまだに支配的であろう。これは変えねばいけない。ついでにいえば、鎌倉幕府が進歩的(そこから中世が始まる)で貴族化した平家がそうでないという歴史像は、明らかに「東京中心史観」にもとづく。これも関西ローカルの地域興しとしての平家顕彰でなく、日本史像全体の問題として教育を変えていく必要があるだろう(鎌倉のある神奈川県でこんなことを言ったら殴られるかもしれないが)。

ついでにこれも原著が指摘する、政権を指して「幕府」という用語は、幕末に尊攘派の後期水戸学者によって一般化されたものが明治期にお上によってオーソライズされ、しかも鎌倉・室町・江戸の3政権だけを幕府と呼ぶことにされたという事実も、たとえば高校教員は知っておくべきだろう。

美川さんの批評は、高橋氏の鎌倉幕府理解を黒田俊雄氏の権門体制論および佐藤進一の東国国家論との関係で論評したところも参考になる。しかし印象に残ったのは、高橋氏が指摘する「幕府」という用語の政治性および、高橋氏の平家研究の斬新さ(それは頼朝と比べても、院政に変わる新しい王権を構想したことなど多くの面で新しかった)から見れば、「これも鎌倉幕府と同じく幕府である」というオチにしてしまったのはおかしいのではないかというツッコミである。なるほど。説得的だ。


『路面電車EX』第4号

『鉄道ジャーナル』今月号といっしょにこれも購入。
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鉄道新技術の展示会Inno Trans2014(ベルリン)の紹介記事には、アルストム、シュコダ、ボンバルディアなど世界の有名メーカーの新型トラムの写真が満載。シーメンスのトラム生産も、一般の日本人にもっと知られていいだろう。

ハンガリーのトラムを紹介した「ミシュコルツのトラムについて」、アメリカのLRTを扱う「進化するアメリカのLRT-ロッキー山脈の麓の2都市を訪れる」も興味深い。日本人にもなじみの深いデンバーとソルトレークシティーのLRTが取り上げられている。かつて「自動車産業による路面電車つぶし・鉄道つぶし」や「マイカーで行く郊外のショッピングセンター建設」のモデルだったアメリカで、郊外線は高速ですっとばす長大編成のLRVを走らせ、バスだけでなく郊外でのマイカーとの乗り換えも容易にして、自動車に頼らずに都心部に人が行ける仕組みを作ったため、都心部の再生が成功しているのは、実に興味深い。


『境界史の構想』

福島大の史学会・東北史学会・福島史学会共催シンポに行ったあと、新学期の授業や会議・研究会などいろいろあって、ブログが全然書けなかった。2学期の高度教養科目「市民のための世界史S」、リーディング大学院(オールラウンド型)の歴史学の授業、海域アジア史のゼミ、先週土曜日の歴史教育研究会月例会、さらにはパ・リーグのCSなどなど、書くべきことはたくさんあったのだが、毎日帰宅後もその余裕がなかった(いままで頻繁に記事を書けたのは授業の手を抜いていたから?)。

その間に、村井章介先生からこんなご本も頂戴した。
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「日本歴史 私の最新講義」というシリーズのことは初めて知ったが、面白そうだ。

本書からは脱線するが、5日の福島大での学会で村井先生が、境界というのは単純に線で区切れないグラデーションである、ただしグラデーションに段差があり、研究者はそこに着目して(それぞれの視角や問題設定にあわせて)線引きをするのだ、と発言されたのが印象に残っている。そういう線引きの非客観性・恣意性をことさらに指摘するポストモダン的方法をむげに拒否すべきではないが、そういう便宜的な方法だということを自覚した上で(素朴本質主義を超えたやりかたで)線引き自体の説得性を高めるやり方は、依然として歴史学の本筋であろう。

『英雄になった母親戦士-ベトナム戦争と戦後顕彰』

平安時代の研究で有名な京楽真帆子さんが、ベトナムに関する本を出された。ベトナム戦争にいろいろなかたちで「参加」したベトナム女性については、当時たくさんの報道がなされ、当事者たちの発言も伝えられたが、ジェンダー構造に踏み込んだ「研究」はまだ少ない。

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茨城大に勤めて故吉沢南さんに出会ったことが最初のきっかけだったそうだ。伊藤哲司さんと同僚になったことも影響したのだろう。
調査のためのベトナム滞在中に何度かお会いしたが、積極的な研究分野の「越境」に拍手を送りたい。またこれも本の中に書いてあるが、ファン・ハイリンさん率いるハノイ国家大学東洋学部日本学科の協力も重要な意味をもったに違いない。現地語のできない研究者が現地に強い日本人や現地の研究者の協力を受けながらハイレベルな研究をすることは、人文系ではとくに容易でないが、しかし「現地語のできる地域研究者」が研究を独占する時代はとっくに終わっている。その点で、本書はモデルケースになるのではないか。



プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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