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『市民のための世界史』の記事

読売新聞(大阪本社版)の昨日の夕刊に記事を載せてくれた。


大阪大学出版会からは、初版第1刷が間もなく売り切れるので第2刷を出すという連絡が入った。
有り難いことである。
ちなみに、第1刷には恥ずかしい誤植がいくつもあり、直さねばならない。皆さんもお気づきの点があれば私宛にお知らせください。
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沖縄慰霊の日

忙しくて昨日のうちに記事が書けなかったが、
沖縄戦の犠牲者に誓うのが、沖縄を国際法を無視して占領した相手に、「東アジアの無法者を抑えるため」と称して沖縄を差し出し続けることだというのは、やっぱりおかしいだろう。

鎖国下の琉球の対中国貿易と長崎の対中国貿易の違い

先週の「市民のための世界史」で、鎖国後の日本では「4つの口」で対外貿易を続けたという話をしたところ、琉球の対中国貿易と長崎の対中国貿易はどう違うのだ、という質問が出た。

いちばん基本的な違いは、琉球の貿易は中国に出かけていく朝貢貿易(=国家間貿易)であるのに対し、長崎貿易は向こうから民間商人がやってくる貿易(密貿易・海賊集団、東南アジア華僑、清朝が認めた商人集団など中身はいろいろ)という点だろう。
第二に、日本側での貿易の利益は、琉球貿易では薩摩藩や琉球王国に入る(もちろんその下にいろいろな商人がいるが)のに対し、長崎貿易では江戸幕府と長崎市内の商人に入る(こちらももちろん、背後にいろいろな藩や商人がいるが)という点も、大事な違いだろう。つまり江戸幕府は、日本列島の貿易や外交を完全に一本化することはできなかったということである。

金額や貿易品はいろいろな変化があるが、琉球貿易はかつてのような反映を取りもどすことはできなかったと見られる。ただし商品の点では、最近有名になった蝦夷地から琉球へ続く「昆布ロード」など、琉球も日本各地の産物を集めて中国に持ち込んでいる。

なお、以前にも書いたことがあるが、豊臣秀吉の朝鮮侵攻後、日本列島中央の政権と中国の外交関係は途絶したままになっている。長崎で貿易をしているから江戸幕府と清朝の間に外交関係があったかのような誤解がよく見られるが、あれは国家間の外交とは関係がない。鎖国後の長崎に中国本土から渡航したのは、密貿易集団でなければ、清朝が「政経分離」で特別に認めた商人集団である。日本と清朝の間に正式の国交が結ばれるのは、明治時代に日清修好条規が結ばれたときである。このへんは、中学・高校でも気をつけて教えてほしい。

昨日の講義は教科書第7章「ヨーロッパの奇跡」。イギリスの財政軍事国家形成と産業革命、米仏などの「環大西洋革命」などが主な内容である。今回の小テストは章の最後の課題でなく、章の冒頭にある「前章で見たアジアの18世紀と、ヨーロッパの18世紀の動きはどう違っていただろうか」を書かせた。政治・国家体制、軍事、経済と暮らしの3つを中心に書けと口頭で指示したが、どんな答案が出てくるだろうか。前週の日中比較の課題についても、今日の講義の冒頭であらためて要約したので、「アジアは眠り込んだまま変わらなかった」などとは書かないと思うが。

18世紀東アジア諸国の成熟と日中の大分岐

先週の「市民のための世界史」の小テストの採点が、今日の5限の講義の直前にやっと終わった。

講義は教科書の第6章「アジア伝統社会の成熟」で、
小テスト問題は、
この時期に固まった日中両国の社会的・政治的伝統のうち、明治以後の日本の近代化、20世紀末からの中国の発展に影響したことがらをあげよ。

第2節「18世紀東アジア諸国の成熟と日中の大分岐」の内容をまとめさせようとしたものである。日中比較の部分は與那覇潤さんに先を越されたが、この章は、第1節「東アジア諸国の「鎖国」」や第3節「東南アジア・インド洋世界の変容」も合わせて、私がもっとも力を入れて書いた章ともいえる。
小テストについては、コラム「近世東アジア諸国の共通性と差異」を講義中に十分説明する時間がなかったのが申し訳なかったのだが、団体型社会の日本、ネットワーク型社会の中国などのポイントは押さえてある答案が多かった。社会の男性中心化というところに着目した答案や、もうひとつのコラム「東アジア各国の食生活の変化」を使った答案もあった。この章は本文の事実経過の説明は他の章にまして簡略で、その分コラムに大事なことが書いてある。高校だとコラムは入試に出ないから読まなくていい、などとなるのだが、この授業ではそうはいかない。

近現代のところをまだやってないので、小テストの答案を見ても、日本の近代化や中国の発展のイメージがあまりない学生が多かったが、近世のまとめはまあまあできている学生が多かった。

ちなみにこのブログを見てい院生や高校教員の皆さん、節のタイトル「18世紀東アジア諸国の成熟と日中の大分岐」の後半が、どんな理論を意識したネーミングかわかりますよね。

学術会議シンポ(補遺)

下の記事の続きだが、高校世界史という科目の歴史についてたくさんの論文を書かれた茨木智司さん(上越教育大)が、通学校の歴史や大学入試の歴史も研究しないと、「歴史基礎」も今までの新科目(世界史Aや現代社会などなど)の轍を踏んでうまくいかないおそれがあるとコメントされた。もっとも話だ。

もう一点、やむをえず「地理基礎」「歴史基礎」などをやろうとしているが、本当はかつてそうしていたように地理と世界史・日本史を全部履修するのがいいのだ、という発言が複数あったが、地理や政経などが1科目しかないのに、歴史だけ特権的に世界史・日本史と2科目を占めることが正当化できるかどうかは疑問だ(選択科目としては両方あってかまわないが)。こんな発言をすると、では歴史の教員採用が減ってもいいのかと叱られそうだが、茨木さんが明らかにされた戦後の科目設立のいきさつから見ても、本来は「日本史・世界史を統合した歴史という1科目」でいいはずだ。主張するなら、外国のように何学年にもまたがって学ぶことを前提に、総単位数を大きくすることだろう。たとえば理系風に、歴史I・歴史IIなどと科目を分けることを考えるのは不可能だろうか。

なお、「地歴科」か「社会科」という議論にこだわる発言も会場から出された。たしかに大きな問題なのだが、今回の提言の範囲を超えているし、社会科で考えられている市民の育成という観点は、今回の提言でもはっきり打ち出している、という主宰者側の「答弁」は妥当なところだろう。

高校地理歴史教育に関する学術会議シンポ

今日、東大の駒場キャンパスで開かれた。定員200人の教室が一杯になり、追加で持ち込んだ椅子に座る人などもおおぜいいた。

内容は「歴史基礎」に関する新しい提言(昨日、学術会議のHPに出た)の紹介、高校世界史Bの用語限定など今後の改革方向の提言(昨日紹介した世界史研究所HPに出ている提案はそのたたき台)、「地理基礎」とその上にできる選択科目地理の構想、それにこの間「地歴融合」「地理基礎」「歴史基礎」の実験校になった3校の実践報告。

今回の新しい提言およびシンポでは、「歴史基礎」「地理基礎」それぞれ2単位必修、その他に選択科目として地理(複数の案あり)・日本史・世界史などを置く、「歴史基礎」「地理基礎」も大学入試に入れさせる方向で働きかける、従来のB科目に当たる各科目も入試を含めて改革をはかる、などの方向性が打ち出された。

地理がいかにも系統的で国際標準にも合ったような組み立てを打ち出したのは、個人的には地域研究や文化人類学などアメリカ的な学問(や理系)とのつきあいで慣れている所だが、歴史が必ずしもそうなっていないことが示されたのと対照的ではあった。ただ、地理で高校生のオリンピックや国際バカロレアのことが紹介されていたが、歴史でそういうことを考えるのがきわめて難しいのは、政治的な混乱が予想されることだけが理由ではない。史料を読むことが必須の歴史について(文学も同じだが)、はたして英語を共通語にして、内容的に英語圏の歴史に偏らずに高校生オリンピックや国際標準が成り立つかどうかが深刻な問題である。またこれは、たまたま今週の東洋史のゼミで実感したのだが、近代歴史学の「実証」と中国近世に成立し現代の中国やベトナムに影響している「考証学」の「実証」は、方法的に重なる部分がたくさんあるが、全く似て非なる部分もある。高校教育もそれをベースにしている面があり、狭義の政治性の問題にならなくても、同じ史料を読んでまったく対立する結論が出るおそれがある。地域研究をかじった者として、そこで一方的に近代歴史学の方法が正しいとは言えない。

これを含め、地理がある意味で既存のモジュールの組み合わせや使い方を変えるだけ新科目ができるのに対し、歴史はゼロから作らねばならない面が多いと、あらためて感じた次第である。

いずれにしても、高校教員に教え方の研修をどう保証するかが決定的だという発言もあった。全く正しい。

油井先生のもとで用語制限の検討(検討のもとにした、世界史・日本史の教科書に出ている用語のリストのすごさを見ていただきたい)などしたメンバーも集まった。昨日紹介した世界史研究所のHPに、それに関連するアンケートがまもなく出るので、ぜひ大勢の関係者にご協力いただきたい。
プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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