スポーツと体罰

「口でいってもきかないワルガキを押さえるのにやむをえない範囲」は完全に逸脱している。

行きすぎた勝利追求や根性主義は散々論じられてきたが、
グラウンドや体育館、合宿所の掃除を1年生だけにやらせることを当然だと思う←世の中に出たら不条理がたくさんあるのだから、今のうちにそれに耐えられるような訓練をしておく→それに従わない者はつまはじきにされて当然、という発想(スポーツにスポーツ以外のものを求める)がなくならない限り、体罰もなくならないという面白い意見がたしかスポニチに出ていた。

いずれにしても、全柔連と相撲協会が「内輪の論理だけで行動する」同じ性格をもっていることは度し難い。国際大会で勝てなくなっているのだから言い訳のしようがないだろう。
この件はオリンピック誘致にもマイナスだろうという。柔道や相撲の、たとえばモンゴル力士にはわからない日本精神(????)を強調してきた「愛国者」の皆さんは自分たちの責任に気づいているだろうか?
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明治維新・3つの謎

三谷博さんの「明治維新を考える」が文庫になった。


書き下ろしの序章がまず面白い。歴史教育の現場で広く読まれるべきだろう。
武士の社会的自殺(明治維新を主導したのは農民やプルジョワではなく下級とはいえ武士だが、それが武士の特権を自分で放棄・廃止した)はなぜおこりえたか、明瞭な単一の原因の不在にもかかわらずなぜ大きな変革が実現したか、「復古」を掲げながら急速な開化を実現したことをどう理解するかの3つの、これまできちんと説明されてこなかった(そもそも説明の対象にされなかった)謎を提起している。これらの謎に迫る方法として、「複雑系」
の科学理論と、世界史上の諸革命との比較が説かれる。

序章の最後の節「普遍を求めて」では、
「本書で筆者が試みたのは、日本や東アジアの歴史の中に、人類一般の歴史と社会をより深く理解するためのヒントが隠されてはいないか、その可能性を探究することであった。日本人に限らず、非西洋世界の知識人には、自分自身の世界を理解するためであっても、まず西洋産のモデルを輸入しようと努め、うまく当てはまらない場合には、何とかこじつけたり、「特殊」とか「例外」に分類して、思考の圏外に追放したりする習慣がある。この知的慣習に従い続ける限り、我々は自分自身の社会を十分に理解できないだけでなく、人類一般に知的貢献をすることも、永遠にできないだろう...」と述べる。

あとがき(有志舎版、今回の岩波現代文庫版の二つを収録)でも、いいことがたくさん書いてある。
たとえば有志舎版には、
「日本史の論文は、普通、沢山の史料群から長い時間をかけてこれはと思われる史料を拾い出し、つなぎ合わせる形で書かれますが、(駒場の組織改革で仲間になった外国研究者を見ると-引用者注)外国研究ではそんなことはできず、太めの線で大まかな輪郭を描かざるをえません。このため、外国史研究者の議論は抽象度が高く、広い範囲をカバーすることになります。他方、日本史研究者は同じレヴェルの言葉を持たず、そのため彼らと大きな話をすると負けてしまいます。制度改革のおかげで、私は外国史研究者と同じレヴェルで考えを構成し、表現せざるをえなくなったのです」

「西洋の学問は、歴史のように、個別の史料・史実を大事にする場合でも、優れたものは、つまり他の歴史家に影響を与える作品は、常に新しい洞察、観点・言葉・技法・叙述法を提出したものです。個別の記述に留まらない、一般的な洞察を提供すること、それが西洋の学問の理想で、私は小学生の時に西洋の科学史の本を読んで以来、その世界に憧れてきました...日本人の日本史は、専門の範囲では世界的にみて高いレヴェルに到達していますが、外国での歴史研究や他の学問分野に影響を及ぼしたことはまだありません。それができて、初めて世界の学界で一人前と認められるのですが、実力があるだけに残念なことです。この本は、日本の学問が持つそうした天井を破ることを目的にしています...」

史学概論や海域アジア史研究会などで再三私も言ってきたことだが、こういうふうに問題点を見据えた研究者が史料が豊富で実証レベルの高い日本史畑からたくさん出てきたら、「太めの線で大まかな輪郭を描く」しかできないわれわれ外国史研究者などは、吹っ飛ばされてしまうだろう。

3つの謎に答える第I部の1~3章、側面からの理解を助ける第II部「維新史家たち」(マリウス・ジャンセン、遠山茂樹、司馬遼太郎という人選と配列も面白い)、それに「東アジア近世化論」と斬り結ぶ「終章 「近代化」再考」という本体は読んでのお楽しみ。

文系頭の私には完全な理解は困難だが、著者が依拠する複雑系の科学は、インプットとアウトプットがきっちり対応する古典的な方程式がたくさん組み合わさると、その一部分の微細な変化が全体として巨大で予測不能な変化になる(カオスが生み出される方向だけでなく、逆に秩序が生み出されることもある)という理論だろう。実際、たとえば明治維新第一の謎(武士自身による武士の特権の廃止)は、その場その場での個別の緊急課題への対応が積み重なるうちに、だれも抵抗できない形で特権の廃止が進んでしまった、だれかがどこかの段階で明瞭な全体プランとしてこれを主張していたら、武士階級をあげての強力な抵抗に遭遇しただろう、と説明される。

もっともだとは思う。が、ということは全体像とプランを示す内部からの改革は(日本では?)失敗するということかと考えると、歴史教育研究会で私がやろうとしていることは間違いなのかな、などと考えてしまった。

さて、今月はたくさん記事を書いた(月間最高記録)。学年末の採点論文審査、入試などで忙しい2月はどれだけ書けるだろうか。

與那覇潤「中国化する日本」合評会

大阪大学歴史教育研究会特別例会として2月9日と3月2日の2回に分けて開催することになった。著者の與那覇さんも来ていただける予定である。
http://www.geocities.jp/rekikyo/oshirase.html

第1回 日時:2013年2月9日(土)13:30~17:30 
場所:大阪大学豊中キャンパス文学部本館2階大会議室 
報告:「中国史の視点から」①伊藤一馬(大阪大学博士後期課程)②向正樹(大阪大学文学研究科招へい研究員)③田口宏二朗(大阪大学文学研究科准教授)④杉山清彦(東京大学総合文化研究科准教授)

第2回 日時:2013年3月2日(土)13:30~17:30
場所:大阪大学豊中キャンパス文学部中庭会議室
報告:「日本史・歴史教育の視点から」①高木純一(大阪大学博士後期課程・日本学術振興会特別研究員)②後藤敦史(日本学術振興会特別研究員)③久保田裕次(大阪大学博士後期課程)④後藤誠司(京都市立日吉ヶ丘高校教諭)

中国史と日本史、歴史学と歴史教育の本格的かつ建設的な他流試合の場にしたい。
私見では、高校や大学で歴史(学)を教える教員の大部分が、この本のようなレベル・タイプの議論をできるようにすることは、歴史学と歴史教育の再生にとって決定的に重要である。

未来共生に向けた歴史

文科省の大型予算「リーディング大学院」で阪大が申請して採択された「未来共生イノベーター博士課程プログラム」(略称RESPECT.HPへのリンクは右)の立ち上げの公開セミナーが、万博公園のホテルで開かれた。複数の研究科の院生を集め、各自の専門と並行して他流試合や現場での修業をさせるプログラムで、今年度から7年間の計画である。
多文化共生、自然との共生などいろいろな「共生」を研究し、専門研究と社会や政策を結びつけられる人材の育成が目標で、私も担当者の一人になっている(例によって基礎的な素養としての世界史と歴史的な見方、それらのプレゼンとディスカッションなどの)。

偉いさんの記念講演、中心メンバーによる座談会などがおこなわれたが、元気な老人の熱弁、時間のコントロールができない先生の長広舌(他人の発言時間を奪うのが「共生」か、とツッコミたくなった)、うろ覚えの歴史の怪しい講釈などあって、なかなかに楽しめた。
プログラムが終わる2020年は大阪万博50周年で、そのときに「万博をなつかしむ」(引用者注--大阪はそればっかりや)のではなく、万博が掲げたが実現できなかった「人類の進歩と調和」の新しいモデルを提示するのだ、というしめくくりの発言もおもしろかった。

しかし放っておくと、こういう実践を重んじるプログラムは、申請の中心になった人間科学研究科、国際公共政策研究科、それに言語文化研究科(外国語学部)などの研究科ばかりが動いて、CSCDはともかく文学研究科の大勢は(毎度のパターンで)文句を言いながら授業は提供したが得るものはあまりなかった、という結果に終わりかねない。そうならないように、こういう場でふつうに活動できる歴史系の院生・若手を育てたい。

それにしても、現在の歴史教育(とりあえず高校の)は、今日の各話者が問題にしたようなテーマに取り組むための素養につながる内容になっているだろうか。たとえばさまざまな「弱者」「マイノリティ」を考える土台をつくる歴史の授業はおこなわれているだろうか。「考える」というのは、「強者/マジョリティの立場で一方的に見下す」ことではないのはもちろんだが、だからといって「単純に同情する(それは見下すのと一緒だ)」「一方的に弱者の立場に立つ(そんなことはできない)」ということでもない。
あるいは「相互理解」というのはどうすることだろうか。ほんとうに他者は理解できるのだろうか。ある程度以上はできないが、しかし「それぞれが勝手に行動すればよい/さもなければお互いに交渉しない」とはならないとしてら、われわれはなにを目ざすべきだろうか。

そういう難しさを考えさせる内容になっているだろうか。
「教え方」もだが、「中身」もきわめて心許ない。

もう一点、自治体の国際交流畑で働いてこられた方の、国際交流というのは「特殊な」しごとで「好きな人」がやるものだ、という扱いが根強いのを批判していた。そう、東南アジア研究も「特殊な」分野。「実証研究」でない世界史を語るのも「特殊な」しごと。パリーグファンは「特殊な」人種。何度も何度も書いたが、昔みたいに露骨な差別はないものの、われわれのしごとが世間で「普遍」と認められたわけでは決してない。

こういうところを変える力を、このプログラムは持てるだろうか。




京大近辺

京都の世界史読書会に行く前に用事があって、正門脇のレストラン「カンフォーラ」で昼食。
「総長カレー」で有名なところである。
P1000010京大正門脇食堂の総長カレー
私が頼んだ魚フライのランチはイマイチだったが、まわりは観光客や若いカップルで繁盛していた。

時間があったので、出町柳経由で読書会の会場の同志社まで歩く。
新しい店もいろいろできているが、「ミリオン」「三高餅食堂」や名曲喫茶の柳月堂など昔からある店も残っている。
P1000012葵橋から出町柳方向
出町柳から西に端を渡り、枡形商店街の入口の路上でおばちゃんが台の上に並べて売っている「すぐき」を購入。昔も田中市場前などに、大原の方から売りに来たおばちゃんがよくいた。
P1000016出町商店街前で買ったすぐき

それにしても先週末から寒い。京都はもちろん寒く、夜帰るときには河原町今出川で雪がちらついていた。
これは月曜朝の石橋だが、霜がいっぱい降りていた。
P1000018.jpg

40年前の世界

ベトナム和平協定のことを書いたついでに、40年前の世界のこともいくつか思い出した。私が高校3年生になる年だった。先日書いた50年前とは、いろいろなことが変わっていた。

1973年で世界史の教科書に定番として出てくるのは、第一次石油ショック(10月~)である。ほかに東西両ドイツの国連加盟承認、第4次中東戦争、アフガニスタンのクーデタで王政廃止、タイ学生革命なども年表に出ている。冷戦構造が大きく変わりつつあった。

日本円が変動相場制に移行したのはこの年2月だ。年配の人は、この年の「狂乱物価」とトイレットペーパー買い占めなどを思い出すだろう。
春闘で総評のゼネストとか、長沼ナイキ基地訴訟で自衛隊に違憲判決などのできごとは、今の若い人は信じないかもしれない。日本から金大中氏が朴正煕軍事政権下の韓国情報機関によって拉致された「金大中事件」は8月だった。

脱線だが、今朝のサンスポには野村克也の連載最終回が掲載され、そのなかで西鉄ライオンズのエース池永正明にふれていた。オールスター戦で王貞治にいとも簡単に併殺打を討たせたので野村が感心したという話である。ランナーを置いて併殺打を打たせたいとき、それまでは内角の速球で詰まらせるのが普通だったが、池永が初めて落ちる変化球を引っかけさせたのだそうだ。高卒1年目から20勝して稲尾にかわるエースになった池永は、黒い霧事件で(汚名を着せられて)追放されるまで5年間毎年オールスターに出て、たしか1点も取られていないはずだ。1970年に池永を含む主力選手が球界追放されて西鉄ライオンズがぼろぼろになり、3年連続ダントツ最下位ののちに太平洋クラブライオンズに変わったのが、40年前のシーズンだった。事件全体がフレームアップではなかったとしても、それを読売が大いに利用したことは事実である。日本シリーズではジャイアンツに負け続け、おまけに人気のあったライオンズと東映フライヤーズの主力選手が黒い霧で追放など、この時期のパリーグはとてもつらい時代だった。

もっともジャイアンツの連覇はこの年で終わり(その後現在まで、2年連続日本一はない)。大鵬は2年前に引退しており、「巨人大鵬卵焼き」の時代は終わろうとしていた。翌年はロッテオリオンズが日本一、それからブレーブス3連覇という、パリーグの夜明けはすぐそこまで来ていた。


なお日越友好協会のテトパーティの案内記事に不正確な点がありましたので、修正しました(インドネシアの踊りは間違い)。早とちりですみません。
プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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