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近世史フォーラム4月例会

木下光生さんがやっている研究会。日本史だけでなくいろんな人を呼んでおり、今回はうちの吉川君が報告。いつも元気な会だ。

【近世史フォーラム4月例会のご案内】(再送)
◇日時:2019年4月19日(金)18:30~20:30
◇会場:大阪市立北区民センター 第5会議室
    https://www.osakacommunity.jp/kita/access.html
◇報告:吉川和希氏
   「18~19世紀前半のベトナム北部山地における軍政と在地首長
     ―諒山地域を中心に―」
 〈参考文献〉
  吉川和希「17世紀後半における北部ベトナムの内陸交易―諒山地域を中心に―」
       (『東方学』134、2017年)
  岡田雅志「タイ族ムオン構造再考―18~19世紀後半のベトナム、ムオン・ロー盆
地社会の視点から―」
       (『東南アジア研究』50-1、2012年)
      「近世ベトナム国家の異民族観の変容と越境者―内なる化外たる儂人を
めぐって―」
       (『待兼山論叢』史学編50、2016年)
  武内房司「デオヴァンチとその周辺―シプソンチャウタイ・タイ族領主層と清仏
戦争―」
       (塚田誠之編『民族の移動と文化の動態』風響社、2003年)
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グローバルヒストリーの入門書2点

山下範久さんが編んだ『教養としての世界史の学び方』を先日やっと読み始めた。やられた感の強い好著だ。こういう本(市民向けの歴史学の入門書)を前の科研の成果としてちゃんと出していれば、阪大歴史教育の科研が落とされることもなかったんじゃないかと反省。
そこで負け惜しみとして2つ悪口を書いておこう。その1。ビジネスマンの教養書のようにも書いているが、そもそもこの本が理解できる基礎教養を持っているビジネスマンが多数派だったら、日本社会はこんなにひどくなってないだろう。そういう感覚を欠いた「男性ビジネスマン(特に中年の)の価値観」が日本社会を支配し、出版企画もそういう男性に売れそうかどうかで判断する風潮が、明らかに日本をダメにしている。そもそも人口比から言って、男性ビジネスマンは国民の多数を占めていないだろう。
その2。はじめの方で山下さんが、近代ヨーロッパが作り出した強者中心の枠組みを共有したままでいくらヨーロッパ中心史観を批判してもダメだよと書いてるのに、それをやってる著者がいること。

もう1冊、3月の愛知世界史研究会等で取り上げられている(阪大歴教研も6月に著者をお招きしている)北村厚さんの『教養のグローバルヒストリー』。これは現在の高校世界史B教科書が、枠組みが古いためにみんな気づかないが、実は組み替えをすればこれだけグローバルヒストリーを踏まえて書いてあるんだよ、という本。発想が良い。
ただしドイツ史専門の著者ゆえ、個々の記述はアジア史や日本史など間違いもある。これを「だからダメだ」とやっつけるのでなく、みんなで協力して細部の不正確さを正していく方向で、この本が活用できたらすばらしい。なお著者はこの本を使った所属大学の授業で、学生に問いを作らせその出題意図まで書かせているそうだ。中学や高校で歴史の新しい教え方をする教員のトレーニングとして素晴らしい。6月の阪大の例会でその話も聞けるのが楽しみだ。

第61回愛知世界史研究会のご案内

豪華ラインナップ。これも「地方の研究会」というより全国区になってほしい会である。

第61回愛知県世界史教育研究会

1 日 時 平成31年3月31日(日)午後1時~5時30分

2 場 所 愛知大学名古屋キャンパス 講義棟L804教室
名古屋市中村区平池町4-60-6 JR名古屋駅から徒歩10分
           http://www2.aichi-u.ac.jp/guide/access 
  

3 内 容 下記の通り

(1)研究発表
①金鯱(きんしゃち)が見てきた世界史 
 -グローバルな歴史をもつ名古屋と世界のつながり―
 愛知大学 加納 寛
②政治的主体の育成を志向するオーストリアの教育改革
 -ウィーン大学:Fach Didaktik Zentrumの歴史・政治教育教材を手がかりに-
 広島大学大学院 尾藤郁哉
③「ヨーロッパ中世の特徴」を、いかに史資料で/に語らせるか?
 -新科目「世界史探究」に向けての一試案-    
 大垣商業高校 井上智也
④歴史的思考力育成にあたっての史資料の扱いに関する一考察
 -中学校と高校の歴史教科書を比較して-
 一宮高校 小島孝太
⑤高大接続の観点から見る高校世界史教育
 -教員養成系大学における世界史Aの学習効果-    
 阿久比高校 内藤裕子
⑥認知心理学から見たジグソー学習の教育的意義   
 名古屋市立大学 山田 孝

(2) 講演 
 「高校世界史とグローバル・ヒストリー-拙著の紹介と「問い」への展望-」
 神戸学院大学人文学部准教授  北村 厚

4 その他
 (1)北村厚先生の著書『教養のグローバル・ヒストリー - 大人のための世界史入門』
  (ミネルヴァ書房2018年2700円)を2割引(2,160円)で会場で頒布しますのでお求めください。
 (2)懇親会を、午後6時より4,000円会費で行います
 (3)「図書購入希望」「欠席」「研究会のみ参加」「懇親会も参加」と分かるように連絡ください
  連絡先:事務局 磯谷正行まで 電話:0564-51-0202(岡崎高校)
  メール:maisogai(a)m2.catvmics.ne.jp(自宅)

明後日は日大へ

高大連携歴史教育研究会と日大の共催シンポが今年も開かれます。
http://www.kodairen.u-ryukyu.ac.jp/pdf/others/20190321ad.pdf

海域アジア史の近刊書

1冊目は「イギリスのアヘン貿易でおこった中国の銀流出と中国経済の苦境」「財政難に陥ったオランダによるジャワでの強制栽培制度」などに共通する、もっと大きな背景としての世界経済と貨幣の変動に着目した論争と新研究の紹介。高校教育もこれを読んだら変更が必要になる。
イメージ (183b) イメージ (184b)

もう1冊は東大出版会の『海から見た歴史』の英訳。海域アジア史研究入門の英訳プロジェクトがもたついている間に先を越されてしまった(汗、)。
イメージ (185b)



グローバルヒストリーの研究協力打ち合わせなど

先週土曜日は中の島センターでグローバルピストリーをめぐる阪大と東大との協力の話し合い。途中で抜けねばならない私の事情もあり阪大側の報告を先に並べたのだが、3人で1時間のはずが大幅超過してしゃべりまくるところがさすが大阪? (私はほぼぴったり終わったぞw)
東京側の3報告は、グローバルヒストリー研究を欧米と組んで英語でやる場合に日本側がぶつかる問題点を論じていて参考になった。結局「珍しいマイノリティの情報提供者」に終わったり、「西洋中心史観の打破を掲げて新しい世界の中心になろうとする」西洋研究者の立場を被支配者の側から強化する役割に陥る危険など。地域研究や人類学がよく議論した問題が、こういうところで出てきたのが面白かった。
上記の危険性を認識しながら協力に参加する松方冬子さんの卓抜な表現。「女性の解放を論じる男性たちの会は、それを論じない男性の会や、女性だけの会より面白い」。
最後まで聞けなかったが、佐野真由子さんの上のような危険性とそれを越える方法の整理もよかった。その一つはマイノリティの立場を経験させること。国内学界についてだが、日本史、西洋史や中国史の研究者にそういう経験をさせるべきだと私がいつも言ってるのと同じことだろう。
これについては翌朝の毎日新聞の城戸久枝さんのコラムも共通の主張をしていた。マジョリティの側にいる人々は、自分でマイノリティの世界に踏み込んで、マイノリティの立場から物事を考える経験が必要だということ。私流にひねれば、マイノリティ社会の中で自分が逆にマイノリティ扱いされる、また自分が属したはずのマジョリティから自分もまとめてマイノリティ扱いされる、両方の経験が意味をもつ。そういう経験のないマジョリティは大抵、マイノリティに対する無意識の差別に鈍感であったり、「女性の解放を語る男性」の私を含む大部分がそうであるように、偽善と自己満足の運動しかできないことになる。

で中座して、土曜夕方と日曜午前は奈良女のジェンダー史シンポ。西洋中心主義と日本一国史観の新しい本山の一つであるジェンダー史の学界で、アジアジェンダー史をどう構築するかが今回のテーマ。午前に聞けなかった河上麻由子さんの唐代までの東アジアでの支配者間の婚姻についての報告はレジュメをもらったが、散々行われてきた「和蕃公主」の研究が王権論やジェンダーなど視点を欠いたために見ようとしなかったポイントを突いているように思われる。倉沢愛子さんの研究でよく聞いた日本軍政下のジャワ島で発行されたジャワ・バルという写真誌に、日本語版とインドネシア語版があってキャプションなどが全然違うという話(インドネシアから奈良女に来た院生の報告)も面白そうだ。
実際に聞けた小浜正子さんの東アジアジェンダー史構築のための課題整理、それを含む世界のジェンダー史の時代区分の視点整理の全体討論なども有益だった。ただし「世界を論じる際に何に気を付けないとバランスを崩したり新たなバイアスを生むことになるか」については、従来の世界史やグローバルヒストリーの経験をもう少し取り入れる余地がありそうだ。たとえばどの論点についても体系的に考える際に取り上げる実例はヨーロッパ・中国・日本でなければ中東で、アフリカや東南アジアは「珍しい例外」として紹介されるに終わりそうなところ。これまで蓄積してきた「近代の問い直し」の諸論点などは逆にグローバルヒストリーの側が大いに学んで自分の議論を深めるべきところで、やはり両者の異種格闘技戦を、もっと全面的に展開しなければならない。

それにしても私は、女性に囲まれたジェンダーの会--日曜の科研メンバーだけの会では男性は私だけ--でも毎回平気でべらべらしゃべるのだが(単にタガが外れているだけか??)、グローバルヒストリーのところで書いた「マイノリティの中に入る経験をすべき人々」は、こういうところに参加するとよいのだと思われる。

プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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